はじめに
第1回 費用の考え方
第2回 効果の考え方
第3回 費用対効果
第4回 本人出願
第5回 出願依頼
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第3回 費用対効果
このように特許発明がボトルネック的なものであれば、後発企業の方から特許権の譲渡あるいは実施許諾を要請されるということになり、譲渡にしろ、実施許諾にしろ、有利な条件で譲渡代金あるいは実施許諾料を得ることができるということです。
それに対し、ボトルネック的なものではないのであれば、後発企業としては、わざわざ実施許諾料を支払ってその特許発明を実施する必要はないし、まして譲渡代金を支払って特許権を取得する必要もないわけです。
特許を取得すれば即、収入につながるのかというと、決してそうではないということはおわかり頂けたでしょうか。なお、自分が「後発企業」の立場となり、特許を取得しても逆に自由実施できない場合があることはお忘れにならないようにして下さい。
このように、業界の競業他社が避けては通れない技術を特許発明として押さえてしまうことが重要なのであってボトルネックといわれるゆえんであり、その効果は非常に大きなものとなるでしょう。但し、権利化は、その分、おのずと難しくなります。
ここでひとつ重要なことは、ボトルネックとなる発明をすることと、ボトルネックとなる特許になるように手続をすることとは違うということです。
たしかに、ボトルネックとなる発明をすれば話は簡単なのですが、競業者は互いに競い合うもの、考えていることはみな似たり寄ったりで、そのような発明をすることは容易ではありません。そのため、最初のアイデアがボトルネックとなる発明ではなくても、それを出発点とし、ボトルネックとなる特許になるように出願することができれば、出願する価値は十分にあるということなのです。
そして、そのときにどれだけの助言やアドバイスをすることができるかどうかが、まさに弁理士の存在価値ということになるのではないでしょうか。
このように積極的理由や消極的理由が存在する場合には、費用対効果の面で特許出願しておく必要があると考えて良いでしょう。
逆に、積極的理由や消極的理由がなく、費用対効果の面で特許出願をする意義が乏しいのであれば、特許出願することはお薦めできません。
経済的損失が残るだけだからです。
「特許出願をして○○万円を稼ごう」などを謳い文句にした雑誌等をときどき目にしますが、十分ご注意下さい。
巷間で噂されているほど、特許ビジネスは簡単なものではありません。
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